太極拳の道」へもどる
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 NHKの人気番組「ためしてガッテン」では、これまで数回にわたって、高年前者の寝たきりを防ぐための最新医学知識を紹介している。昨年4月28日の番組では、身体のバランス感覚を改善するには太極拳は最適であると放送した。太極拳を愛好しているものにとっては大変うれしい言葉である。太極拳の体重移動は、ゆっくりと一方の足から他方の足へ移す。このことがバランス感覚の訓練に非常によいのだという。


 20代と60代以上の身体を比べてみると、高年齢者は若い人より筋力が20%落ちるといわれている。減少量が20%とは、かなりの量が落ちているように聞こえるが、バランス感覚(深層感覚)に関しては、それどころの比ではない、ぜんぜん比べものにならないのだ。その低下率は80%にもなるという。そのために高い段差とはいえない1.5cmの高低差でも、バランスをくずして転んでしまう。
 4月の番組、バランス感覚の測定方法と各年代の標準値とを発表したのに先立ち、一昨年11月の同番組では、下肢大腿の筋力を測定し、その筋力が何歳の筋力に相当するのかという、筋力年齢を発表している。
 これら発表した数値は、NHKが「のと自慢」公開放送に集まった観客に協力してもらい、筋カテストでは1200件、バランステストでは1000件の観客の平均値から割り出したものである。測定方法は次のとおり。


  [測定方法]
 1.下肢筋力測定法:この方法は、おもに大腿前面にある「大腿四頭筋」の力を測定したものである。膝角度90度になるような椅子に座らせ、30秒間に何回の立ち座りができるかを数える。その回数から年齢を割り出す。


 2.バランス感覚テスト:この方法は、人体のバランス感覚(深層感覚)をはかるものである。人が目をつぶっても立っていれるのは、下肢を中心とした筋肉にどのくらいの力が入っているのかを脳が感覚として捕らえることができるからである。このことによって、はじめてバランスが取れるのである。これを深層感覚という。年齢が高くなるとその感覚が極度に衰えてしまう。
 測り方は、雨足のスタンスを広く取らずに直立し、両腕を前方に挙上して肩の高さまであげる。その指先の位置を基準値のOcmとする。腰を徐々に前に曲げていき、指をできるだけ前方に伸ばす。指の前に伸びた距離と基準値の差(地面に水平な距離)を測り、その長さから相当年齢を割り出す。この時カカトが浮いてしまってはいけない。
 参考数値をNHKが発表してくれたので当会でも検証してみようと、昨年8月中句から3回にわたり測定してみた。結果は次のとおり。


  [当会の測定]
 測定総数106件、女性82件、男性24件。 NHKの集めたデータ数の約10%になる。
 NHKでは5歳毎に数値を発表したので、当会ではその数値から、測定された者の年齢一歳ごとに換算しなおして比べてみた。
 当会での全体のデータ数が少なく、年齢によってはわずか1件という場合も多く見られた。その中で比較的多かったのは、女性の67歳の8件である。男性では60歳、73歳が同数で3件であった。

 ☆☆☆バランステスト、筋力測定の表、グラフを参照のこと☆☆☆


  [結果] 
1.バランステストにおいては、全員が高い数値を示し、NHK発表の年代標準値を超えていた。女性で一番低いのは74歳の3人であり、平均値は29.3であった。この数値でもNHKの56歳の若さにひってきする数値である。標準年齢より18歳も若いことになる。
 筋力測定でも、ほとんどが高い数値を示し、標準以下は106人中わずか4名であった。その中の1人は変形性膝関節症をわずらっている方である。
 2.NHKの発表では男女間での成績差がみられたが、当会員では性別間の差は見られなかった。
 3.各年齢別でデータ件数の最も多かったのは、67歳の女性の方で8名であった。この人たちの平均値をみると、バランステストでは40.3cmであり、標準年齢の33歳(換算値40.0cm)よりも若いことになる。年齢が34歳も若いことになる。また筋力測定を見ると、その平均値は28.8回。 NHK発表の一番若い数値は25歳の27回なので、それよりも若いということになり、恐るべきかな!である。
 男性の場合、各年代に十分なデータ件数がなかったので、分析結果発表はさし控える。 NHKは太極拳がバランス感覚訓練に最適な運動であると結論づけていたが、当会員の検査数値からみても、まったく同じ結論に達している。